そらいろのたね

文 なかがわりえこ
絵 おおむらゆりこ
発行 福音館書店
初版 1967/1/20
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 28
発行部数 不明
オススメ度 B

概要
ゆうじが公園で模型飛行機で遊んでいるとキツネがやってきました。キツネは模型飛行機が欲しくなり、自分の宝物である『そらいろのたね』との交換を申し出、ゆうじは了承します。

ゆうじは家に帰って庭に種をまき、たくさん水をあげます。次の朝、芽が出たかと見に行ってみると、芽ではなく何と空色の小さな家が生えてきていました。ゆうじは嬉しくなってさらに水を与えます。

 

感想(若干ネタバレ注意)
私が最初読んだ時はなんてことはない話に感じてあまり興味を持てませんでした。おっさんのかたーい頭では面白さがすぐに理解できなかったのかも。何度か読んでみて徐々に面白みを感じるようになってきました。こどもにとっては夢のある楽しい絵本です。

まずは普通に芽が出るのではなくて家が生えてくるところが楽しい。ここでこどもは掴まれますね。次はどうなるんだろうと期待してしまいます。ゆうじはびっくり仰天するわけじゃなくて、「うちがさいた!」と喜びます。大人だったら喜ぶ前に???と固まってしまいそうですが、こどもは素直に楽しい出来事と受け取って喜ぶんですね。私はこの家が生えるというアイデアがありきたりの奇抜さのように感じて最初のめり込めなかったのですが、素直に楽しめばいいんですよね。この辺が多分前述の頭の硬さなのかなと思いました。

家は少しづつ大きくなっていきます。最初はひよこが入れるくらい、次は小動物が入れるくらい、そしてこどもが入れるくらいへと。こどもが入れるようになる頃には、読者のこどもは羨ましくて仕方ないでしょうね。そしてさらに家は大きく、夢も大きくなっていきます。

家が大きくなるにつれ、こどもや動物たちが集まってきます。中には『ぐりとぐら』に出てきた動物たちや、『いやいやえん』の登場人物などが混じっています。ぐりとぐら本人も出ています。オールスター感謝祭のようです(笑)

ラストはあっさりで、盛り上がったところでハシゴを外されたように感じる方もいるかも知れません。でも私はこういうの結構好きなのです。お祭りが終わった後のような感覚が残るのが。『てぶくろ』もそんな終わり方でしたね。この感じ、ニール・ヤングのアフター・ザ・ゴールド・ラッシュを思い起こします。

最初と最後のきつねのワガママな言動とその結果を通して多少の教訓が含まれています。欲深じいさんにバチがあたる昔話のようです。こどもはお話を純粋に楽しみながら自然に吸収していくのでしょう。

くわずにょうぼう

文 稲田和子(再話)
絵 赤羽末吉
発行 福音館書店
初版 1977/3/1
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

概要
昔、うんと欲張りの男がいました。男は”よく働いて飯も食わない嫁がほしい”と考えていたところ、突然目の前に理想の女が現れ、所帯を持ちます。実際女はよく働き、飯も食いません。

しかしある日蔵の米俵が激減していることに気づいた男は、出かけると嘘をつき屋根裏に隠れて様子を伺います。そこで見たものとは…

 

感想(ネタバレ注意)
伝承の昔話を再話したお話です。

昔、アニメ『まんが日本昔ばなし』でたまにこわ~い回がありましたが、そういう時のお話の内容をイメージしていただければかなり近いと思います。でもこどもはキャーキャーと怖がりながらも楽しんで見るんですよね。

一番印象に残っているのがおにばばの頭に大きな口が現れるところ。(こども向けの絵本ですし、リアルな絵ではないので親御さんが心配するようなほどのものじゃないですよ。)衝撃の秘密が露わになり、ここから一気にスリリングな展開になる端緒の部分です。これでおにばばの怖さが読者にもイメージ付けられるんですね。

あと、おにばばに捉えられた男が運良く逃げ出すのですが、それに気づいたおにばばが猛スピードで飛ぶように走り出すところ。やばい感満載です。果たして男は逃げ切れるのでしょうか。

短い中にも伏線が張られ、終盤にそれが回収されます。昔話なのにちょっと凝った構成です。

エンターテイメントとして良くできた作品だと思います。過度な欲張りへの戒めやうますぎる話には要注意、といった教訓が含まれてはいますが、それよりも親子で一緒にハラハラドキドキを楽しんでいただければと思います。そんな経験もまた一種の思い出になるのではないでしょうか。

言ってみればこの作品はホラーなんです。ホラーなんて、と思われる方もおられるでしょうが、こどもにとって何がよい経験になるかはわかりません。問題のあるものでなければ色々と経験させてあげたいと思いますし、何よりこんなに面白い作品ですから楽しんでもらいたいと思うのです。

おにばばと言えば、もう一つすごく面白い名作が。こちらも是非ご覧ください。→ さんまいのおふだ

どうぶつのおかあさん

文 小森厚
絵 薮内正幸
発行 福音館書店
初版 1981/10/20
対象年齢 2歳から
文字の量 かなり少なめ
ページ数 24
発行部数 不明(2007年3月で第62刷)
オススメ度 A

概要
色々な動物のお母さんがこどもを連れて移動するさまを描いた絵本です。

11種類の動物の親子が登場します。(表裏表紙も含めると13種類いますよ)

 

感想
小さい子向けでストーリーはありません。見開き2ページに1種の動物の親子の様子が描かれ、それが続くシンプルな構成です。ある意味小さな動物図鑑とも言えるかも知れません。地味ではありますが長く愛されてきたロングセラーです。

こどもと移動する際のやり方がそれぞれの動物によって違うんですね。ライオンのお母さんなんてこどもの頭をくわえて運んでるんです。なんかすごい。ハリネズミのこども達はお母さんの後について一列になって行進します。かわいいなぁ。なかなか興味深いです。抱っこしたり、おんぶしたりと、人間の親子のようなのもあります。それぞれにお母さんとこどもの繋がりや温もりが感じられます。こどもも興味を持ちつつ安心して見られるでしょう。大人もこれは癒やされますよ。

非常にリアルな絵です。デフォルメされたまがい物とは違う生命感があります。でも写真でない手描きの絵による温かみのようなものも感じられます。それがお母さんとこどもという対象にとても合っています。

調べてみたら薮内正幸さんは動物画家なんですね。因みにあの『冒険者たち』(ガンバのお話ですよ。懐かしい)の挿絵も書かれていました。動物好きがこうじて動物画家になったのでしょうか。この本の絵には、動物を見続けた人の細部に渡る知識と、この動物はこんななんだよってこどもに伝えてあげたいという気持ちが込められているような感じがします。清里の近くに薮内正幸美術館というところがあります。この絵本が気に入ったら遊びに行ってみてはいかがでしょうか。

本には『2歳~4歳むき』と書いてありましたのでこちらでも2歳からにしましたが、1歳でもこどもによっては興味を持ってくれそうです。