ないしょのおともだち


文 ビバリー・ドノフリオ
絵 バーバラ・マクリントック
訳 福本由美子
発行 ほるぷ出版
初版 2009/5/25
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 A

ないしょのおともだち のあらすじ・内容

昔々、とても大きな家にマリーという女の子とその家族が住んでいました。その家の隅には、小さい家があってネズミの女の子が家族と住んでいました。マリーの家族とネズミの家族は構成がまったく一緒で、生活レベルも同等、マリーもネズミも毎日学校に通っていました。

おる日マリーは夕飯の後片付けをしていてフォークを落としてしまいました。ちょうどその時ネズミもスプーンを落としてしまいました。これがきっかけで二人はお互いの存在に気づきます。でも大人は人間とネズミで互いに嫌っているので、家族には内緒でこっそり毎日手を振り合うようになりました。

やがてマリーは大きくなり、家を出ます。ネズミも大きくなり家を出て、お互いに会えなくなります。

マリーは結婚し、子どももでき、とても大きな家に住むようになりました。ネズミも結婚し、子どももでき、とても大きな家の隅に住むようになりました。

ある日、マリーの娘マリアが本を取り落しました。その時ちょうとネズミの娘ネズネズも本を取り落しました。

親子2代に渡る人間の女の子とネズミの女の子の秘密の関係を描いた、かわいくユーモラスな絵本です。

ないしょのおともだち の解説・感想

一目見て、これはご紹介しなくちゃと思いました。

この本を見ているとなんだか自然にスマイルになってしまいます。遊び心にあふれたお話と絵です。

人間とネズミの似たような生活の対比が面白い

表紙をご覧になって分かる通り、ネズミの女の子も人間の女の子と同じような生活をしているんです。服を着て、本を読み、食器で食事をし、ベッドで眠り…それぞれの行動がネズミと人間の両方共ページの左右で対比するように描かれていて、それがとても似ているんです。表紙のネズミの仕草なんか、ネズミには失礼ですけどマリーとまったく一緒でなんかいっちょ前な感じがとても愉快です。

ネズミのお家をよーく見てみて

マリーの家とネズミの家は生活が同等と上で書きましたが、微妙に違うところがあります。マリーの家はアメリカの中でも比較的裕福な家庭と思われます。ソファーやカーペットなど調度品は豊かさを感じさせます。ネズミも比較的裕福な感じに見えますが、さすがにネズミのサイズのソファーなど存在しないようです。ではネズミたちが座っているソファーは何なのかと言いますと、どうもよく見ると卵のパックみたいです。そこに布を被せて立派なソファーに仕立て、ティーバッグをクッション代わりにしているようです。絵をよーく見てみるとネズミの家の家具や飾りが人間のものを活用している事がわかって面白いですよ。隅々まで丁寧に描き込まれている絵なので、そういう楽しみもあります。

背表紙には、大きなフォークと小さなスプーン並んでが描かれています。本書を読み終わった後に見られるこの象徴的な絵が、楽しかったお話をもう一度思い出させていい感じの余韻を残してくれます。

秘密を持つことの嬉しさ

子どもにとって秘密を持つって、何だかワクワクしていいんでしょうね。(ウチの子も「お母さんには秘密だよ」なんて言うと嬉々としていました。)その秘密が、大人はその価値が分からず嫌がって見向きもしないようなものなんですが、子どもにとっては素敵なもの、という点も実にいいです。しかも人間からは床に近いところまで屈まないと見えないようなところにネズミの世界が隠れているのが、また心憎いです。そういう変な場所は小さな非日常であり子どもが好みます。マリーが家族に気付かれないように何気ないふうを装って、ネズミと手を振り合う仕草がとても愛くるしいです。読者の子どもはこんな体験に憧れるでしょうね。強いてどちらかと言うと女の子向けの絵本なのかも知れませんが、こういった点については男女には関係なく楽しく感じられるところだと思います。

文中に『おおきなひそひそごえ』という表現が出てきます。細かいことは本書を読まないとわからないと思いますが、内緒だから一応ひそひそ声なんだけど気持ちが高揚してしまって自然に音量が大きくなってる状態ですね。この表現が私は大好きです。子どもの気持ちがこの表現に見事に表されているから。親御さんなら絶対わかってもらえるはず。なんとも微笑ましいです。

そしてラストは…詳しくは説明しませんけど、お母さんのマリーの時代は実現しなかったことがついに。これから楽しいお話がまだまだ続きそうな気がする素敵な終わり方でした。

ちゃんとしたストーリーがありますが、難しいものではないので、4歳未満でも楽しめる子は十分楽しめると思います。

この絵なくしてこの作品はありえない

細部まですご~く緻密に描かれている絵がこのお話にすごく合っています。この人の絵でなければここまでいい絵本にはならなかったかも。品の良さが感じられるのもいいですね。バーバラ・マトリントックさんの他の絵本も見てましたが、本作が一番氏の才能が活きている気がしました。

マリーの子ども時代の家は古き良きアメリカの時代を感じさせますが、マリーが大きくなるとヒッピーみたいな服装になってきます。そして家庭を持って住んでいる家はモダンな作りで、マリアの部屋もポップで現代的な感じがします。なんだかアメリカの近現代の風俗やファッションの変遷をも描き分けているようで、この辺も面白いですし、オシャレですね。

因みに、カバーには作者と訳者の紹介文が載っているのですが、そんなところにまでユーモアが散りばめられています。

実は続編もあるんですよ。本書が気に入っていただけたら続編の方も楽しんでください。

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