つみきのいえ


文 平田研也
絵 加藤久仁生
発行 白泉社
初版 2008/10/21
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 41
発行部数 不明
オススメ度 B

つみきのいえ のあらすじ・内容

おじいさんがたった一人で住んでいる、海に浮かんだように見える奇妙な小さな家。子ども達は既に独立し他所で家庭を築いています。おばあさんは3年前に亡くなりました。釣った魚と飼っている鶏の玉子、屋根で育てている小麦、そして足りないものは近くを通る行商人の船から買い、自炊をして暮らしています。

この町は少しづつ海面が上昇していて、床上に浸水すると今の家の上に新しい家を積み重ねて作り、上へ上へと移り住んできたのです。

ある冬の日、部屋に浸水している事に気づいたおじいさんはまた屋上に新しい家を作り始めます。

ところがある時、うっかり工具を取り落としてしまいます。潜水服を着込んで、海の中へ探しに行きます。工具を見つけて周りを見回すと、そこは昔家族みんなでおばあさんを看取った部屋でした。

おじいさんは、そこからさらに下へと潜っていき、以前住んでいた家を一つ一つ見て回ります。

ある家に住んでいた時は、町でカーニバルがありました。子ども達が孫を連れて集まり、おばあさんは美味しいパイを焼きました。

ある家では、一番上の娘がおばあさんが設えたドレスを着て花嫁となって巣立っていきました。

ある家では、飼っていた子猫がいなくなり、子ども達が悲しみました。子ども達は子猫に書いた手紙を瓶に詰めて流しました。

ある家では、おじいさんとおばあさんに最初の子どもが生まれました。

どの家にも思い出が残っていました。

そしてとうとうおじいさんは一番下の最初の家までたどり着きました。

つみきのいえ の解説・感想

静かに心に沁みてくる

地味なお話で、感動を巻き起こすとかそういうタイプの絵本ではありません。特に大きな事件などは一切ありません。人生はかくあるべきとかいうような主張もありません。ただおじいさんの半生を現在から過去へとゆっくりたどっていくのみです。過剰な期待はかえってこの本をつまらなくしてしまうかも。ただただ静かに心に沁みてくる本です。読後は心に温かいものが残ります。自分の人生を俯瞰して見るきっかけにもなるでしょう。

元々は国際的に評価の高い名作アニメーション

元々は短編アニメーション(米アカデミー賞短編アニメーション部門、仏アヌシー国際アニメーション映画祭アヌシー・クリスタル賞他、国内外で数々の賞を受賞)だったのを、アニメの監督と脚本家の二人が絵本化したものです。大枠の話は同じですが、細かい所でアニメとは違った部分もあります。正直に言うと、私はアニメの方がよかったです。アニメはセリフなどがなく映像とBGMだけでした。このお話には言葉による説明はない方がいい気がしました。(でもそれはこの絵本がダメということではありませんよ。私個人のあくまで相対的な印象です。)

基本的に大人向け

基本的には大人のための絵本ではないかと思います。ある程度の人生経験がないと、実感としてわからない事が多いでしょうから。そして家庭を持った大人にとっては特に感情移入しやすいと思いますよ。

子どもにも見て欲しい

でも子どもにも読む意味はあると思います。理屈でわからなくていいから、何かしら感じ取ってくれればと思います。人生という概念そのもの。おじいさんは生まれた時からおじいさんなのではなく、子どももいつまでも子どもなのではないこと。自分が見ているものが世界のすべてなのではなく、多くの人それぞれにそれぞれの世界があること。

懐かしさを感じる色合い

表紙を見ての通り、とてもやさしい暖かみのある絵です。色調がセピア色っぽい感じで、そのせいかなんとはなしに懐かしさのようなものも感じます。過去の思い出を見て回るというお話にぴったりな気がしますね。

大切だったはずの何かを思い出す

社会的な問題、例えば温暖化などの環境問題、過疎化、高齢化、独居老人といった事も見ようによっては見えてはくるのですが、この絵本の主題はそこではないと思います。読む人それぞれがそれぞれの形で、人生において大切だったはずの何かを思い出す、あるいは自分の人生というものを見つめ直すキッカケになるような作品だと思います。

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