窓をひろげて考えよう


著者 下村健一
イラスト 森絵実子
発行 かもがわ出版
初版 2017/7/24
対象年齢 10歳から
文字の量 やや多め
ページ数 48
発行部数 不明
オススメ度 B

概要

絵本というよりも図解の実用書です。

8つの事例を通して、メディアリテラシーに関して子どもを啓発するという趣旨の本です。

感想

『メディアリテラシー』というあまり耳慣れない言葉がこの本の主題です。『メディアリテラシー』とは、メディア(テレビ、新聞、雑誌、インターネットなど)からの情報を自分の頭を使って受け止める力の事です。はっきり言ってインターネット上の情報は虚実入り混じっていてカオスです。嘘の情報を鵜呑みにしてしまって人に迷惑な行為をはたらく事件は数多くあります。アメリカの大統領選挙ではネット上のフェイクニュースが選挙結果に影響を及ぼした可能性があるとの報道もありました。最近ではテレビや新聞でさえも、偏向報道がなされたり、誤報が起こったりしています。(そもそも論としてどこから見ても完全なる真実のみを報道するという事自体、非常に難しいことなのかも知れません。)情報過多の時代に生まれた子どもたちが情報を単純に鵜呑みにしないよう、想像力を働かせて情報と現実の関係を正しく理解するためのコツをこの本では説明しています。

全部で8つの事例が載っています。松本サリン事件のような実際に起こった事件をベースにしたと思われる事例も中には含まれています。

一番最初の事例では、クマが人里に現れたというテレビニュースが描かれています。怖いですよね。人によっては早くクマを退治して欲しいと思うかも知れません。でもそこでページをめくってみると、今度はテレビではわからなかったクマの世界が描かれています。子グマたちがお母さんグマに抱きついて震えているのです。もちろん人間を怖がっているのです。立場を変えてみてみると違う側面が見えてくるよ、という説明がついています。タイトルの『窓をひろげて考えよう』という意味がわかっていただけるかと思います。

実はこの本、私はTV番組『情熱大陸』で知りました。NPO法人『国境なき子どもたち』で働く松永晴子さんの回です。松永さんはシリア難民の子どもたちの教育を現地で支援する活動をされています。子どもたちは情報ソースが限られており、主に両親からの情報や考え方の影響を強く受けやすい環境にあるのだそうです。そんな子どもたちが一つの情報や考え方に縛られずに目を開いてくれるようにと、この本を使った授業を企画するのです。

そこで私は感じました。この本はメディアリテラシーについて書かれていますが、ここで説明されている頭の使い方は、メディア対する時だけに使われるようなものではないと思うのです。これって要するに想像力を使って、見えてない部分の存在に気づき、より広く深く物事を見るということです。日頃の生活、仕事、勉強、人間関係などあらゆるところで必要となるはずです。人が生きていく上で重要な能力であろうと思うのです。だからこそ、この本をご紹介したいと思いました。

著者の下村健一さん。この名前でピンとくる方もおられるかも知れませんね。昔テレビでアナウンサーをされていた方です。そういう仕事をされていたからこそ、メディアリテラシーに関する問題意識を強く持たれたのかも知れません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。