ちいちゃんのかげおくり


文 あまんきみこ
絵 上野紀子
発行 あかね書房
初版 1982/8/
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 56
発行部数 不明
オススメ度 B

概要

出征の前日、お父さんはちいちゃんにかげおくりの遊び方を教えてくれました。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ちいちゃん、4人が並んでかげおくりをしました。

やがて戦況は悪化、ちいちゃんの住む街にも空襲が来るようになります。ある日、空襲警報の鳴り響く中避難するちいちゃんはいつの間にか一緒にいたお母さん、お兄ちゃんとはぐれてしまいます。

偶然出会った近所のおばさんに連れられてかつて家のあった場所に戻るちいちゃん。そこで雑嚢に残された干し飯を少しづつ食べながら家族を待ちますが…

感想(注意:ネタバレあり)

まだ小さい子どもがある日突然家族と離れ離れになり、家もなく、たった一人で残されます。どんなにか心細かったことでしょう。子を持つ親なら自分の子どもとどうしても重ね合わせて見てしまうだろうと思います。やりきれない気持ちになります。

かげおくりという遊びは残像効果を利用したものです。影を10秒間瞬きせずに見つめた後に空を見ると、影の形が空に浮かび上がって見えるというものです。まだ家族全員が揃っていた時にみんなでやったかげおくりが、物語の終盤になって再び現れ悲しい結末へとつながっていきます。かげおくりはこの物語の中で幸せの象徴になっており、且つまたその遊びの特徴の通り非常に儚い象徴にもなっているのです。

ちいちゃんが亡くなるシーン。ほんの小さな出来事ででもあるかのようにポツリと、でも唐突に現れます。戦時下では一人の子どもの死というものも多くの悲惨な出来事の中のほんの小さな一つだったのかも知れませんし、死はある日唐突に現れるものだったのかも知れません。

戦争の描写に関しては特に直接的な残酷なもの過激なものはありません。全編に渡って重苦しい不安なような雰囲気があり、それが間接的に戦争というものを暗に教えてくれます。

ちいちゃんの物語が幕を閉じた後、最後の見開き2ページはそれから数十年後のちいちゃんの家のあった辺りの様子を描写しています。そこは公園となって子ども達が笑いながら遊んでいます。悲しいお話だけで終わらずにこの場面を入れたのがグッジョブだと思います。当時と今の対比によるお話上の効果はもちろん、子どもの思考を拡げるいい刺激になると思うのです。

反戦物の子ども向け絵本に関して、大人には色んな意見があろうかと思います。しかし戦争の背景がどうであれ何の罪もない子どもが犠牲になるというような事態は何としても避けねばならないという気持ちは同じだろうと信じたいです。戦争にもし何らかの意義があるとしても、それは後で学べばいいでしょう。人間として根本的な精神を養う小さい子どもの読む本に関してはただ単純に「戦争いかん」でいいのだと私は思うのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。