三コ


文 斎藤隆介
絵 滝平二郎
発行 福音館書店
初版 1969/8/15
対象年齢 5歳から
文字の量 やや多め
ページ数 35
発行部数 不明
オススメ度 B

概要

いつどこで生まれたのかも、そして名前さえもはっきりしない三コと呼ばれる大男。誰も彼を見たことはありませんが、ある時は谷川の断崖に丸太の橋がかかっていたり、ある時は百姓のために山に溜池が作られていたり、それらは三コがやってくれたのだと皆に噂されていました。

ある日オイダラ村の次男坊三男坊達が原っぱに集まって相談していました。小さく貧しい村においては、彼らは土地を相続することもなく、また村の中で仕事を見つけるのもほとんど無理な話で、どこか他の土地を流れながら何とか食いつないでいくしかないかと相談していたのです。

ところがそこへ誰も見たことがなかった三コが姿を現します。山に腰掛けている三コは山の何倍もあるような背丈の大男でした。彼は土地を作るためにこの山を海へ投げ飛ばしてやろうかと次男坊三男坊達に言いますが…

感想(若干ネタバレ注意)

話の内容は同じ黄金コンビの作品である『八郎』にかなり似ています。自らを犠牲にして貧しい人達の力になるという骨太なお話です。『八郎』が海を舞台にしているのに対して、こちらは山を舞台にしています。

まず『三コ』って何と読むんだ?と思いますよね。これは『さんこ』なんです。でも『さんこ』という名前なのではありません。『コ』の部分は本文ではフォントが小さいんです。これは東北の方言で名詞の後に『コ』が付いただけで、実質的には『三』と呼ばれているのと同じなのだと思います。つまりまともな名前さえ失われて社会的な地位もないような存在だということです。八郎は粗末ながらも着物のようなものを着ていたと記憶していますが、三コは葉っぱで作った着物とも言いにくいようなモノを着ています。

しかし、あとがきで斎藤隆介さんは言っています。

それは八郎も三コも、働く貧しい人々のために命をささげて死ぬ巨人だということである。
しかも、はにかみを知る心やさしき巨人だということである。
それが私の、人間の理想像だ。

あえて名前とか着るものとか余計なものを削ぎ落としたシンプルで本物の理想を追求したのかも知れません。クライマックスで三コが次男坊三男坊達に呼びかける言葉がまさに氏の理想を体現していると思うのです。

この本の背表紙には『読んであげるなら 5歳から』と書いてあります。八郎も同じでしたけど、5歳でどこまで理解できるのかな、という気がしなくはないです。しかしさらに考えてみると、大人の考えるような理解などしなくてもいいのかも知れないですね。子どもなりに感じるものがあればそれで。ストーリーを理解する事に関しては、次男坊三男坊の境遇などは親御さんのサポートが多少は必要かも知れませんが、まあ大体大丈夫だろうと思います。八郎は思い切り東北弁(秋田弁?)が前面に出ていましたが、本作は標準語が主体でその点でも理解しやすいかと思います。

滝平二郎さんの絵は書き直し、書き直しで完成まで2年を要したそうです。八郎は迫力がすごかったですが、本作はもちろん迫力あるページはあるものの、より文章や話の流れに寄り添った緩急のある絵になっている気がします。この絵もまた私は好きです。

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