はじめてのおつかい


文 筒井頼子
絵 林明子
発行 福音館書店
初版 1977/4/
対象年齢 3歳から 自分で読むなら小学校初級向き
文字の量 やや少なめ
発行部数 213万部(2014時点)ミリオンぶっく
オススメ度 A

はじめてのおつかい あらすじ・内容

お母さんにはじめて一人でのおつかいを頼まれた5歳の女の子みいちゃん。最初は飛び上がりましたが「うん! みいちゃん、もういつつだもん」と答え、行くことになりました。

車に気をつける事とお釣りを忘れない事、この2つを約束して、一人で近くのお店に牛乳を買いに行きます。

猛スピードの自転車が現れたり、途中で転んじゃったり、お店の人に見つけてもらえなかったりしながらも、頑張っておつかいをやり遂げます。

はじめてのおつかい の解説・感想

親も子もどっぷり没入できる絵本

最近はテレビでもよくやってますけど、はじめてのお使いって子どもにとって大冒険なんですよね。この本を見ていると、そんな自分のかすかな記憶が呼び起こされるような気がします。各場面でのみいちゃんの気持ちがとってもよく伝わってきて、勇気を出して頑張った時には、もう思わず拍手を送りたくなります(笑)。みいちゃんは性格的にウチの子に似ているような気もして、私はこの絵本が大好きです。筒井頼子さん、林明子さんのコンビの作品は他にもありますが、いずれも主人公の女の子はどこにでもいる普通の子であり、その子どもの目線で描写されます。多くの親御さんは自分の子を見るように、そして読者のお子さんは自分の事のように、身近に感じて感情移入してしまうであろうと思います。子どもがどっぷりとお話の中に没入できる、そんな絵本です。

お話はほんのお使いに行って帰るまでの束の間の出来事です。でもその中にはいくつかの小さな出来事(でもみいちゃんにとってはドキドキするような出来事)が起こります。例えばただ自転車を飛ばすお兄ちゃんやちょっと怖そうなおじさんが近くに来るだけで、みいちゃんはハッと身構えてしまうんですね。それだけではなく、いくつかの障害も起こります。その時々のみいちゃんの仕草や表情は、ホントにどこにもいる小さな女の子そのまんま。林明子さんの観察力と表現力には脱帽です。そしてお話を書いた筒井頼子さんによる細やかな筋立てがリアルさを高めていると思うのです。

みいちゃんすごく緊張してる

みいちゃんの出発の時、みいちゃんは歩くのに手と足が一緒になっています。ものすごく緊張しているみたい。お母さんは頼んではみたもののちょっと心配しているようで「大丈夫かしら」という感じで様子を見ています。

やっとお店にたどり着いたものの、今度はお店の人になかなか気づいてもらえません。後から来た他の大人達は次々に買い物をしていくのに。うんと大きな声を出さないといけないんです。この場面のみいちゃんの気持ちは痛いほどよくわかります。ここがこのお使いの山場かも知れません。結果、みいちゃんは自分でもびっくりする位の大きな声を出してお店の人に気づいてもらえます。お店の人に謝られて(大人がちゃんと謝るところがいいですね)ぽろんと涙が落ちてしまうほど気を張っていたみたい。でもとてもいい経験になったことでしょう。

最後はホッと安心させてくれます

小さい子ども向けの絵本には最後にホッとできる場面が必須ですが、この絵本では今までお話にのめり込んでドキドキしていた読者の子どもを安心させるように三つもの場面が用意されています。まずはみいちゃんが買い物を終えて坂を駆け下りるその先にお母さんが赤ちゃんを抱っこして途中まで迎えに来て手を振っている場面。予想していなかっただけにこれは嬉しいでしょうね。それにお母さんもちょっと心配だったのでしょうね。そして二番目が三人で家に帰っていく後ろ姿の絵。完全に冒険は終わって日常の雰囲気に戻ってますね。そしてさらに第三の場面が。このお二人の絵本は大抵背表紙に、本文のお話のその後が一コマだけ描かれています。この作品でもやっぱりありました。お母さんが赤ちゃんに牛乳を飲ませている(ここはちょっと引っかかるが昔はそうだったのでしょうか)横でみいちゃんも牛乳を飲んでいます。転んで怪我した膝にはお母さんがしてくれたのであろう手当のあとが。この一コマがなんとも言えない安心感をもたらしてくれます。よかったよかったという気持ちになってしまうのです。是非読み聞かせの際はここまで見てくださいね。

表の表紙も、一度本書を読んでからもう一度見返してみてください。本文中で坂の下にお母さんを発見した時、それからお母さんと一緒に家に帰る時のみいちゃんは後ろ向きで表情がわからないのですが、それこそこの表紙の顔なんでしょう。できたよ!っていう気持ちとお母さんが来てくれて一気に安心したのが満面に表れています。

お子さんに少し力を貸してくれるかも

うちの子はどんな気持ちでこの本を見ているのかな。「私もおつかい行けるよ!」なんて強気の事を言いますが、ホントに大丈夫かな。でもおとなへのステップを踏むのに、この本がほんの少し背中を押してくれるかも知れません。

林明子さんの絵は最高

林明子さんの絵はもはや言うまでもない事ですが素晴らしいです。みいちゃんの仕草や表情は文章だけでは実感として伝わりにくい多くのことを読者に伝えてくれます。隅々まで細かく描かれた絵を見ていると、面白い発見があったりもしますよ。私の年代にとっては昭和の景色がとても懐かしく感じられます。

はじめての」がお好きな方はこちらもどうぞ→ はじめてのおるすばん

筒井頼子さん、林明子さんコンビの作品を他にもご紹介しています。
いもうとのにゅういん
とんことり
あさえとちいさいいもうと
おでかけのまえに
おいていかないで

他にも林明子さんの絵が楽しめる本をご紹介しています。『林明子』のタグからどうぞ。

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