【大人向け本】子どもへのまなざし


著者 佐々木正美(児童精神科医)
発行 福音館書店
ページ数 324

ネット上のレビューを見てみても育児本としては定番と言ってもいい本なのだろうと思います。胎児期から始まって乳幼児期を中心に思春期に入るところまでを対象とし、児童精神科医としてのご自分の経験や海外の研究成果などを基に、大人が「子どもへのまなざし」をどう持つべきかについて書かれています。具体的な方策というよりも考え方を説いている本です。具体的な方策が書いていないような本は使えないと思われる方もいらっしゃるでしょうか。でも子育てにおいて発生する問題・課題は人それぞれ千差万別で、その全てについて回答を用意することは不可能でしょう。ならば基本を教えてもらってあとはご両親が応用を考えていく方が現実的ではないかと思われるのです。

大きな章立ては以下の通りです。

  • 乳幼児期は人格の基礎をつくるとき
  • 子どもをとりまく社会の変化
  • 人と育ち合う育児
  • こんな気持ちで子育てを
  • 生命との出会い
  • 乳児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ
  • 子どもの望んだことを満たしてあげる
  • 幼児期は自立へのステップの時期
  • しつけはくり返し教えること、そして待つこと
  • 思いやりは身近な人とともに育つ
  • 子ども同士の遊びの中で生まれるもの
  • 友達と学び合う時期
  • 思春期は自分さがしの時期
  • 豊かな社会がもたらしたもの
  • 保母さん幼稚園の先生へ
  • お母さんへ、お父さんへ

さらに各章には数ページ単位の節が沢山あり、そのタイトルも目次に書いてあります。総ページ数324ページもあって厚い本ですが、節単位で見ると意外とすいすい読めます。目次を見て読みたいところから読んでいくのもアリと思います。

学校に入ってからの国語とか算数とかの勉強は、学び方が大体定まっていて、テストなどで習熟度も測ることができます。しかし、人間としての思いやり、社会性、人を信じる心といった人間性の基盤はいったいどのようにして学んでいくのでしょう。そしてその事に親はどのように関与していけるのでしょう。文中にありましたが、こどもがどんな人間になって欲しいかと親に尋ねると、思いやりのある子に育ってほしいという回答がもっとも多いそうです。私もそうです。ではどうしたら思いやりのある子になるのかと問われると、それをわかっている親はほとんどいません。私もそうでした。この本には、そうした点に関する執筆時点での児童精神医学上の見地が書かれています。「見地」と表現したのは、このような学問ではこれが究極の正解だと言えるようなものはなかなか出にくいだろうし、研究が進むにつれて徐々に深まっていく面もあるかもしれないと私が考えたからです。ですが、読んでみて私自身非常に参考になりました。そしてふと久しぶりに思い出したことがあります。小さい頃に縁日で買ってもらったヒヨコのことです。買ってもらって数日するともう私はヒヨコに対する興味を失っていきました。そしてそうする内にヒヨコは何が原因かわかりませんが徐々に弱ってきたのです。その時に家族の中で私の母だけが、ヒヨコに優しく語りかけ、あれやこれやと世話をしていました。結局ヒヨコは死んでしまったのですが、私はその時の母の様子を未だに忘れることができません。この経験は私の精神に何らかの影響を与えているはずなのです。

この本に関するamazonや楽天のレビューを見てみると大体ほとんどが高評価ですが、少ないながらも数件、この本を読むと自分の不甲斐なさを突きつけられるようで辛いというような主旨の感想がありました。多分とっても真面目で一生懸命なお母さんなのでしょう。実はこの本、語り口は優しいのですが結構厳しい内容も書かれているんです。例えば乳幼児期の育児がうまくいかなかった場合、やり直しはなかなか難しいとか。しかしこういうチクリとくるような事は自分にとって読む価値があることの裏返しではないでしょうか。あまり深刻になりすぎずに読んでおいた方が、よくわからずに悩んだり心配したりしているよりずっといいと思います。私がドキッとしたのは、『両親が仲が良い家庭のこどもはそれだけで大体順調に育つ』『いいご主人に恵まれたお母さんはいいお母さんになれる』という旨のくだりでした。お父さんにも是非読んでいただきたいと思います。

この本でもっとも繰り返し説かれていることは『こどもが望んでいることをできるだけ叶えてあげること』です。そもそもそれが人間性を育む上でどれほど重要なことなのか、私はまったく理解できていませんでした。それが甘やかしすぎになるのではという心配に対する回答、望みを叶えることと干渉することの大きな違いなども書かれていて腑に落ちました。実は私、この著者の本をもう一冊読んでおりまして、それが下記の本です。この本はこの『こどもが望んでいることをできるだけ叶えてあげること』について書かれています。文章量も多くなく読みやすいですよ。

『子どもへのまなざし』はシリーズになっていて、一作目、続、完と計3作あります。ここでは一作目のみご紹介しました。因みに三作目の完は、発達障害のこどもに関する記述が多くを占めています。

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