かばくん


文 岸田衿子
絵 中谷千代子
発行 福音館書店
初版 1962/9/
対象年齢 2歳から
文字の量 かなり少なめ
発行部数 129万部(2014時点)ミリオンぶっく
オススメ度 B

かばくん のあらすじ・内容

動物園のカバの親子の一日を追ったお話です。

朝の動物園。飼育係の少年がかめくんを伴ってかばくんのところに来ました。もう11時。でもかばくんは眠そうです。

かばくん親子とかめくんが挨拶します。

かばくんはかめくんに尋ねます。「今日は何曜日?」「今日は日曜日」なんだかうるさいと思った。

かばくん親子は動物園に来たお客さん達を見に行きます。お客さん達は近づいてきたかばくん達に興奮します。「あれっ亀の子だ」

飼育係の少年が、キャベツとトウモロコシをかばくんに与えます。かばくんはキャベツをひと飲み。

かばくん達はお昼寝みたい。お腹いっぱいなんだな。

少年とかめくんは帰っていきます。「さよなら」

動物園に夜が来ました。おやすみなさい。

かばくん の解説・感想

1962年の発行ですからとても古い絵本です。動物園のお客さんである子どもが下駄を履いていたり、『くつしたはいてる』とわざわざ書かれている辺り、時代を感じさせます。でもこの絵本はミリオンぶっくの一冊であり、今の時代においてもいまだ読みつがれているロングセラーなのです。時代を越えて愛される何かを持っているのです。

最初パラパラと読んだ時は、正直なんだこれ?と思いました。上のあらすじを見ただけだと、全然良さがわからないでしょう。でも何とも言えない味のある本なのです。考えてみるとカバって動物園の主役という感じではないですけど、カバを嫌いな人ってあんまりいないんじゃないかな。カバって地味ながら誰からも愛される存在なんですよね。この絵本全体が、のんびりしててかわいくて、でも大きく力強くて、哲学的でナンセンスでユーモラスなカバの魅力を体現しているようでもあります。お話はホントにカバの一日を追っているだけで、特に起伏はありません。カバのイメージそのままにのんびりと、でも子ども達が興味をいだきやすいような色んな仕掛けが施されて描かれています。そして大人が読んでも深さを感じるから不思議です。

飼育係の少年の物言いはなんだかせっかち。お客さんの子ども達も騒々しい。かばくん親子とかめくんのところだけゆったりとした別の時間が流れているようです。それはただのんびりというだけではなくて、地に足のついた自然な生活とでも言うような雰囲気があります。

かばくんが逆にお客さんを見に行こうとするところは面白いですね。でもそんな風に常識の逆転のように感じるのは大人の感覚で、子どもなんかはカバを見て自然にそう感じるのかも。子どもの感性で描かれているのかも知れませんね。

文章のほとんどがセリフです。ナンセンスな不思議なセリフがユーモラスな印象を与えています。それ以外の文章は一般的な絵本の物語るような文体ではなく、誰に聴かせるでもない詩のような文章で特徴的です。(作者の岸田衿子さんは詩人でもあります。)全体的にリズム感があって子どもも覚えやすいです。

絵は、1ページごとに色合いや構図が大胆に変わっています。下地の風合いや筆運びなどがわかるラフさがなんとも心地よいです。シンプルなんですけど味わい深く、大胆でいてほのぼのとした絵です。これまたカバのようですね。表の表紙から背を通して裏の表紙まで実は絵がつながっている工夫もすごく面白い。お子さんも気づいたらわぁーって喜ぶでしょう。かばくんがキャベツを一口で食べるところは大迫力。丸ごと一個のキャベツがまるでおまんじゅうのように小さい!

大きさ、曜日、服装などの概念がチラリと入っていたり、視点の切り替え(読者からとカバからと人間から)があったりして、子どもの知性を大いに刺激してくれます。視点の切り替えと同時にセリフを発する主体も変わってるんですけど、絵を見るとそれが違和感なく受け入れられるようになってるんですね。カバも色んな方向から描かれていて、カバという生き物の立体的な造形が頭の中にイメージされやすくなっています。

翻訳されて欧米でも高い評価を得ているそうです。

対象年齢は、絵本自体には『読んであげるなら3歳から、自分で読むなら小学校初級向き』となっていますが、ミリオンぶっくでは『2歳から』に分類されています。私も2歳くらいから十分楽しめるものと思います。

本作『かばくん』には、『かばくんのふね』という続編もありますよ。

この絵本でお子さんがカバに興味を持ったら、他にもカバの絵本をご紹介していますよ。 → 『ちいさなヒッポ』 この絵本を見ると、カバって夜行性なんですね。11時になっても眠そうなのはそれだからなのかも。また、是非動物園に足を運んで本物のカバを見せて上げてほしいです。(寝てるかもしれないけど。笑)

他にも岸田衿子さんの作品をご紹介しています。この絵本が気に入ったらこれらもご覧ください。 → 『ぐぎがさんとふへほさん』『ジオジオのかんむり』『スガンさんのやぎ