アンナの赤いオーバー


文 ハリエット・ジィーフェルト
絵 アニタ・ローベル
訳 松川真弓
発行 評論社
初版 1990/12/
対象年齢 4歳から
文字の量 やや少なめ
発行部数 不明
オススメ度 A

アンナの赤いオーバー のあらすじ・内容

戦争が終わったらアンナはお母さんに新しいオーバーを買ってもらうことになっていました。

そして1年後、戦争は終わりましたが、お店には食べ物さえ売っていない状態。家にはお金もありません。でもお母さんは知恵を絞って、アンナに新しいオーバーを着せてあげようとします。

まずはお百姓さんのところに行き、羊の毛とおじいさんの金時計を交換してほしいとと頼みます。お百姓さんは快諾してくれましたが、春になって毛を刈る時期まで待たなければなりません。

次は糸紡ぎのおばあさんに羊毛を紡いでくれるよう頼みます。ランプと引き換えです。おばあさんはそんなに早くは仕事ができないのでサクランボが熟す頃まで待って欲しいと言います。

今度はその毛糸をアンナが望む赤色に染めます。コケモモを採集して、鍋で煮込み、その汁に浸して、染まったら干します。これは二人でやりました。

そうして機織り、仕立てと順に進み、次の冬には…

アンナの新しいオーバーができるまでの過程を描いた心温まるお話です。

アンナの赤いオーバー の解説・感想

実話に基づくお話

これは実話を基にしているようですね。巻頭に、その実在の人物への献辞が載っています。そこにはこう書かれています。

…今は亡き彼女の母親-最初は自分の決意とねばり強さ以外には
何もなかったにもかかわらず結局はすばらしい贈り物を形にした-…

もしこの本を手にしたら、この献辞の全文を読んでみてください。この子どもがオーバーをどんなに大切に感じているかが察せられます。お母さんは自らの行動で子どもに素晴らしい教育を施したのだと思います。

そこかしこに戦争の残していった影が

お父さんの姿は一度も出て来ませんので、戦争で亡くなったのかも知れません。老人や女性、子どもばかりで若い男性の姿はまったくないなど、作品の中の細かいところでそういう戦争の跡が見えますが、悲劇や苦難をことさら強調するような表現はなく、ただオーバーができるまでの出来事を一つ一つたどっていきます。

私自身、戦争や戦後の事など詳しくはわかりません。この絵本を読むこどもは尚更でしょう。でもこのお母さんの愛情は伝わるのではないかと思います。

普段見えない世界を垣間見る

オーバーができるまで、お母さんとこどもはずっと一緒で、作業の一部は自分たちでやったりもします。その過程は丁寧に描かれています。羊の毛を刈るところからですからね。そういう普段見えない部分を見る疑似体験はこどもにとっていい事だと思います。

小さな幸せ

最終的に素敵なオーバーが出来上がりますが、さらに最後にもうひとつ小さなエピソードが。オーバー作りに関わった人達を招いてイブに小さなクリスマスのお祝いをします。「こんな素敵なクリスマスはまったく久しぶりだ」と言い合います。舞台はヨーロッパのどこかであろうと思いますが、こんなにもささやかな人との交わりに幸せを感じられるというのは、どこに国であろうと同じなんだなと改めて思いました。

服を作る絵本には名作が多い

服を作るという内容の絵本は名作が多いです。普段何も考えずに着ているものが実はこんなに多くの工程と労力を経て作られるということを知り、世界観が広がると思います。他にも服を作る本をご紹介していますよ。→ 服を作る

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