くまのコールテンくん


文 ドン・フリーマン
絵 同上
訳 まつおかきょうこ
発行 偕成社
初版 1975/5/
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 30
発行部数 不明
オススメ度 A

くまのコールテンくん のあらすじ・内容

くまのコールテンくんはデパートのおもちゃ売り場にいて、自分を買って家に連れて行ってくれる人を待っている孤独なぬいぐるみです。

ある日女の子がコールテンくんを気に入ってくれたようですが、コールテンくんは服のボタンがとれていたため古そうだということでお母さんに反対されて買ってもらえませんでした。

その夜、コールテンくんは夜中にデパートの中でボタンを探して色んな売り場を回ります。しかし物音に気づいた警備員に見つかってしまい、おもちゃ売り場に戻されます。結局ボタンを見つけることはできませんでした。

そして次の朝、コールテンくんが目を覚ましたばかりのところに思いがけないお客さんがやってきます。

くまのコールテンくん の解説・感想

大人が読んでもあんまり面白くないかも知れません。が、しかし…ひねった所のないとにかく素直でシンプルなストーリー。未知の世界での新たな発見と体験。子どもがお人形を買うという身近なモチーフ。自分を愛してくれて大切にしてくれる人との出会い。そしてなによりコールテンくんの独白により子どもの心の中を描いており、読者の小さい子どもの心にはスッと入ってくる素敵な物語だと思います。

コールテンくんの孤独な世界

冒頭、こんな文章があります。

おもちゃうりばでは、どうぶつも、にんぎょうも、みな、はやく だれかが きて、じぶんを うちに つれていってくれないかなあと、おもって いました。

みんな孤独なんですね。コールテンくんも例外ではありません。ラストまでは一切会話はなく独り言ばかりです。それが何とも寂しそう。

コールテンくんには口癖があります。「すっと前からxxxxしたいなあって思ってたんだ」というセリフ。これ、繰り返ししょっちゅう出てきます。こどもも言いそうなセリフです。可愛いですね。でもその一方で寂しさも感じます。自分が寂しい境遇だということに気づかないまま、自然に寂しさを紛らわせようとしている言葉のようにも思えます。それに今まで自分の希望が叶えられることなどなかったのかも知れませんね。

買ってくれそうな相手が現れたにも関わらず、ボタンのせいで買ってもらえず、コールテンくんは夜にボタンを探しに行きます。コールテンくんは大人しいから淡々としているように、また建設的な行動のようにも見えますが、この時に想像されるコールテンくんの気持ちに自分としてはちょっと痛みを感じてしまうのです。

そして初めての友達

次の日に来たお客さんとは、前日にも来てコールテンくんを気に入ってくれた女の子でした。彼女はコールテンくんを買うために自分の貯金を持って再訪してくれたのです。そしてコールテンくんは彼女の部屋に迎え入れられます。ボタンもつけてもらいます。そしてここまで独り言ばかりだったコールテンくんが最後の最後に初めて(もしかしたコールテンくんの人生史上初めて)女の子とほんの小さな会話ができるのです。そう考えるとこのラストはなかなかの名シーンです。この女の子がまたとても優しいのです。ベタベタした優しさではなくて、相手を理解し尊重しようとするクレバーな優しさ。一人でデパートを再訪したことからも自分の意思で来たことがわかります。自立心のある子どもです。この絵本を読んだ子がこんな優しさに触れていい影響を受けてくれればと思います。

ボタンがとれていて古そうだけどそんな事は関係なく、自分を好きになってくれる人の存在。コールテンくんにとってこんな嬉しいことがあるでしょうか。コールテンくんの寂しい気持ちをなぞっていく読者の子どもにとってもそれは同じでしょう。そしてこの物語をお父さんお母さんが読んでくれる事の意味もまた大きいのではないかと思うのです。

ちょっと横道に外れますが…この女の子のお母さんはコールテンくんの購入を反対したし、絵を見ても何だか冷たいような印象も受けます。家も裕福ではなさそうです。でも自分の貯金でコールテンくんを買いたいという女の子を最終的に尊重したのでしょう。そして女の子は賢く優しく、裁縫もできます。こんな女の子を育て上げたお母さんですから、きっといいお母さんなんだろうなと想像させられます。

買い物って

女の子がコールテンくんを買うシーンは、何だか自分が子どもの頃に欲しかったものを買った時の気持ちを思い出させてくれました。女の子は梱包を断るんですけど、その気落ちもすごくわかる気がします。大人になってお金を持ち、物欲を刺激する広告に囲まれ、容易に選択肢を比較することができ、ポチッとするだけで物が届く時代に生きていますが、便利で効率的であるにも関わらず、こんな気持で買い物をする事はなくなったなと改めて思いました。なんか流されてるなっていう気がしました。

冒険の要素も

夜のシーンから世界はコールテンくんにとって初めて見るもの体験するものばかり。これはちょっとした冒険です。ぬいぐるみのお話ですが可愛いとか優しいとかっていうだけじゃないので男の子にも興味を持ってもらえるかと思います。

定番と言ってもいいロングセラー

本作はそれほど名の通った絵本ではありませんが、2000年時点で88刷と版を重ねており、初版が古いのにまだまだ現役で新品が入手可能です。長い間愛されてきてもう定番本として地位を確立していると言ってもいい作品だと思います。

続編があれば読みたい!っていう方、多いんじゃないですかね。実はあるんですよ。私はまだ未見なので、読んだら詳しくご紹介したいと思っています。

”コールテン”とは

英語版原書のタイトルは『CORDUROY』。それが何故『くまのコールテンくん』になったのか、はて?と思いましたが…。そうそう昔はコーデュロイの事をコール天と呼んでいましたね。そこから訳者さんがコールテンくんとしたのでしょう。恐らくですが、コールテンくんがはいているオーバーオールがコーデュロイでできているのかな。コーデュロイってちょっと野暮ったい味のある素材ですが、それをコールテンくんが身につけているというイメージが、一層この作品の味を深めるような気がしました。

この作者ドン・フリーマンさんの他の作品もご紹介しています。→ 『ターちゃんとペリカン』 本作とはまた違った詩情あふれる作品です。

「くまのコールテンくん」への2件のフィードバック

  1. もう25年ぐらいたちますが、図書館で借りた本書をよく娘に読んであげました。
    読み聞かせながらも、自分もコールテンくんのさびしさを共有してしまい。
    最後の「ぎゅうっとだきしめました」で、ぐっとくるものがありました。
    そこを読むときは、必ず娘も抱きしめたものです。

    1. 25年たった今も最後の文章を覚えているなんて、本当にこの絵本の世界に浸っていたのでしょうね。こんな風にお母さんに絵本を読んでもらった経験が今も娘さんの中に生きているのではないかと想像されます。松岡享子さんの『えほんのせかい こどものせかい』の中に『子どもに本を読んでやるとき、その声を通して、物語といっしょに、さまざまのよいものが、子どもの心に流れこみます。』という一文がありますが、まさにこういうことなのだと思います。素敵な思い出のお話、ありがとうございました。

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