オオカミくんはピアニスト


文 石田真理
絵 同上
発行 文化出版局
初版 2008/9/29
対象年齢 10歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 36
発行部数 不明
オススメ度 B

概要
孤独なピアニスト、オオカミくんにある日手紙が届きます。ピアノを聞かせて欲しいというのです。

オオカミくんはその手紙の主に会いたくなり、ピアノを引きずって何日も歩き続けますが…

 

感想
「さよならだけが人生さ。」この詩を思い出しました。まさに一篇の詩のように、孤独なピアニストであるオオカミくんを描いた静かで切ないお話です。

起承転結のようなものがあるにはありますが、淡々とお話が進みます。オオカミくんは自分に手紙が来ると嬉しいのです。そして他者にピアノを聞いてもらう事、喜んでもらう事がとても嬉しいのです。でも演奏を終えるとまた孤独な日常に戻ります。寂しい時はピアノを聞いてくれた動物たちの事を思い出します。そして何度めかの演奏依頼においてオオカミくんは自分の孤独を噛みしめざるを得ない悲しい出来事に遭います。ラストもオオカミくんの孤独な境遇は変わりません。寂しさを抱えながらも投げやりになることもなく、自分のピアノを聞いてくれた人の思い出を大切にしつつ過ごし、そして演奏依頼の手紙が来るとまた期待を胸に旅立つのです。作者の石田真理さんの人間観でしょうか。人間というものは誰しも孤独から逃れたくて逃れられないものなのだと言っているようにも思えます。それが真理なのか私にはわかりません。もしかしたらわからないまま期待を胸に時にピアノを誰かに聴いてもらうようにささやかに誰かの役に立つことを喜びつつオオカミくんのように過ごしていくのかも知れません。

油彩の絵が素晴らしいです。どのページも飾っておきたくなるような美しさです。特に宇宙などの広い空間の中にポツリとちっぽけなオオカミくんがいる絵が時々出てきます。広い空間の美しさとその片隅に存在する孤独が沁みてきます。視点から構図からタッチから絵によって大きく変わっていて多彩です。さながら展覧会のようでもあります。自由な遊び心も感じます。

対象年齢はすんごく迷いました。ストーリーを理解するだけなら4歳位でも十分だと思います。だけどそのストーリーはちょっと平板であり上っ面だけ理解しても面白いとは感じないだろうと思われます。この本で何を描いているのかを感じられるどうかは、多分年齢だけが判断基準ではなく、こども一人一人の感受性や経験による部分も大きいだろうと思います。正直な所10歳とした対象年齢もあんまり根拠がありません。ただ一つ言えるのは大部分の大人の人にとっては心に沁みるとってもいい本だろうという事です。

コメントは受け付けていません。