すてきな三にんぐみ


文 トミー・アンゲラー
絵 同上
訳 いまえよしとも
発行 偕成社
初版 1969/12/
対象年齢 5歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 38
発行部数 不明
オススメ度 B

すてきな三にんぐみ のあらすじ・内容

黒いマントに黒い帽子の3人組の強盗団がいました。彼らは馬車を襲いお宝を奪います。まず胡椒吹付けで馬を止め、大まさかりで車輪を壊して動けなくし、ラッパ銃で脅します。お宝は隠れ家である山の上の洞穴に貯め込んでいます。

ところが、ある日襲った馬車にはみなし子の女の子ティファニーちゃんしかいませんでした。ティファニーちゃんは意地悪なおばさんのところへやられる途中でしたが、このおじさん達の方が面白そうだと喜びました。3人組は獲物がないので仕方なくティファニーちゃんを大事に抱え隠れ家へ帰ります。

翌朝目覚めたティファニーちゃんは、今まで三人組が奪ってきたお宝を見つけ、「まぁ、これ、どうするの?」と子どもらしい率直さで3人組に尋ねます。3人組は奪ったお宝をどうするかまでは考えていませんでした。そして相談し始めました。

すてきな三にんぐみ の解説・感想

前半はダークサイドの魅力いっぱい

強盗は悪いことですからリアルに考えたらあり得ない絵本なんですけどね。この3人組、なかなかカッコいいです。表紙に描かれているように目だけが見えていて顔や表情は一切出てきません。スタイリッシュで、何者にも束縛されない自由と力があり、また影があってストイックな雰囲気もあり、男の子なんかは海賊などへの憧れと同じようなもの、ピカレスクロマンとでも言うようなものを感じるかも知れません。3人が使う武器に対しても興味を持つかも。

夜の闇を青っぽい灰色で、強盗を黒で、ほとんどがこの2色を中心に描かれています。これがまた独特の美しさがあり、なかなか普通の絵本に見られない色使いで面白かったです。

ただ、子どもからすると大人よりももっと怖い印象が強いかも知れません。怖いもの見たさで真剣に見入ったり、キャーキャー言いながら楽しむ子もいるでしょう。(そんな子にはひく~い声で読んであげたらいいかもよ。笑)日本の昔話『さんまいのおふだ』なんかはとても怖いお話です。でもそれはそれでまた面白さがありますからね。怖い絵本というだけで遠ざける必要はないと思います。でも、表紙を見た怖い印象で敬遠してしまう敏感な子どもも、もしかしたらいるかも知れませんね。それだと非常にもったいないですね。

『すてきな3にんぐみ』という一見明るいタイトル。表紙の絵と全然合っていません(笑)。表紙のタイトル文字もよく見ると、ホラー映画か横溝正史の映画のタイトルに使われそうなフォントになってて、「どこがすてきなんや!」と思わず関西弁で突っ込みたくなるような遊び心もあります。前半だけ読むとなにが素敵なのか、むしろ反語的な感じさえしますね…

しかし後半は一転。思いがけない方向へ

しかし後半、物語はティファニーちゃんの登場から物語は文字通り一変します。よい方向に。そして思いがけぬ優しい方向に。後半の3人組は前半と打って変わってなんとも可愛いところが見られて、今までとのギャップがユーモラスで面白いです。いつの間にか『心温まる』と言って良い幕の閉じ方でお話は終わります。

3人組の顔はほとんど見えませんし、彼らにはセリフもまったくありません。謎に包まれている感じが面白いです。そしてその目が、前半は感情がないような非情の目付きなのですが、ティファニーちゃんが登場するところから少し角がとれたような気がします。物腰も、子どもを抱きかかえるところなどは大切なものを優しく抱えるような感じで、前半のお宝を運ぶ時とはまったく違うようです。

上記のあらすじ以後のつづきは…3人組は捨て子や孤児を集め始めます。そしてお城を買い取ってそこで一緒に住み始めます。やがて噂は国中に広がり子どもはさらに増えていきます。大きくなった子どもはやがて結婚し、お城のそばに家を建てて暮らし始め、徐々に村ができていきます。村の人達は3人組の事を忘れないように、彼らの帽子の形をした屋根の塔を3つ作ったのでした。

無理やり割り切ってはいけない

後半の行いは元々盗んだお宝が基になっているわけで、その辺りモヤモヤする方もおられるかも知れませんね。(その気持ちはその気持ちでいいのだと思います。)でも多分どんな人でも大なり小なり良いことをしたり悪いことをしたりして生きているはず。それにどんな良い事も悪い面はあるかも知れないし、どんな悪い事も良い面はあるかも知れません。罪を償うなんてことホントに可能なのかも怪しいです。なかなか良い悪いで定義できないのが世の中でしょう。そういう意味でも面白い教育になる作品と言えるかも。この3人組が悪い人なのか良い人なのか話し合うのも面白いかな。でも結論は出せないでしょうし、安易に結論を出してはいけないと思います。ただ一つ教訓があるとすれば『人間は過去は変えられない。でも未来は変えられる』という事でしょうか。

この作者、楽しいお父さんだなぁ

この本は作者の娘さんに捧げられているそうですが、こんな個性的で面白いお話を聞かせてくれるお父さんっていいよなぁと思いました。一応付け加えるなら、この絵本を見て子どもが強盗を肯定的に考えるようになるなんてまあないでしょうから、そういう心配はご無用だと思います。

作者はシニカルな批評家の面も持ち合わせているそうで、この絵本にもそういう社会批判的な意図が込められている可能性は十分ありますね。

あんまり理解できない子どももいるかも

私はこの本、とってもいい(個人的にはおすすめ度Aとしたい)と思うのですが、期待したほどウチの子にウケなかったので、仕方なくおすすめ度Bにしました(笑)。対象年齢を『5歳から』とちょっと高めにしたのも、後半に入って3人組が変わるところが小さい子どもにはついていけないのではないかと思ったからです。不幸な子ども達を集める事もいい事につながっているのだという理解ができないと悪い事のように誤解しかねません。文中の『すてごやみなしご』という言葉も知らないでしょうしね。眠るティファニーちゃんを大事に抱きかかえて隠れ家へ帰るところなんかちょっとした伏線になってるんですけど、そこに気づくのも難しいでしょう。そこの切り替わりが理解できないと面白みがなくなっちゃいますよね。

講談師のつもりで読もう

文章が他の絵本にない特徴的なものです。普通のです・ます調だけでなくて、名詞や形容詞、副詞でいい切って終わる文がかなりあるのです。それがあたかも講談のような調子になって物語の前半のおどろおどろしい雰囲気にマッチしています。読み手も講談師のようなつもりでドラマチックに読むと面白いと思いますよ。

本作とは毛色が違いますけど、怖い大人を無邪気な少女が振りまわすという展開の絵本は他にこんなのもありますよ。 → 『ソメコとオニ

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