やさしい木曽馬


文 庄野英二
絵 斎藤博之
発行 偕成社
初版 1983/5/
対象年齢 10歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 30
発行部数 不明
オススメ度 B

概要
木曽御嶽山のふもとにある開田村では、かつて畑仕事や肥料づくりのために木曽馬が大きな役割を果たしており、家族同様に大事にされて暮らしていました。

木曽馬は小柄ながら力が強く、賢く、また気性が優しいのが特徴です。女性や子どもでも仕事に使えるほどです

昭和十二年に日本は中国との戦争を始めました。開田村には中村さんという人一倍馬をかわいがっている家がありました。中村さんの馬『松虫号』は戦争が始まるとすぐに軍に徴発されてしまいます。

そしてまた、しばらくして中村さん自身にも召集令が届きます。

 

感想(ネタバレ注意)
これは実話を元にした絵本だそうです。悲しいお話ですが過剰に悲劇を演出せず、ドキュメンタリーのように淡々とお話は進みます。それがかえって中村さん、そして松虫号の気持ちを想像させてくれます。

昔の開田村は不便なところで、自然環境も厳しく、そんな所で生きていくために木曽馬は必要不可欠なものだったようです。木曽馬は家族同様に扱われていたようで、家の中でも日当たりのよい南側を馬の住む場所にしていたそうです。馬小屋とかじゃなくて一緒の家だったんですね。甘いものが好きでおはぎや大福を与えると喜んで食べたそうです。子どものように可愛がってたのかも知れません。

中村さんはその後戦地で、なんと偶然にも松虫号と再開しますが、それは最後の邂逅でもありました。その場面での松虫号の仕草、それに応える中村さんの様子は、お互いを本当に信頼し愛していることが伺われ、胸がつまってしまいました。

素朴なタッチの水彩画も郷愁を誘います。

小さい子には難しいであろう言葉がありましたし(例えば召集令、弾薬とか)、戦争についての記述は何の予備知識もなければ理解が難しいかと思いまして、一応10歳からとしました。(因みに本自体には「小学校初級から」と書いてあります。)でもお話の大枠の内容は難しいものではないので、言葉やわかりにく部分を説明しながら読んであげればもっと小さい子でも大丈夫です。またそうやって説明してあげることで戦争というものに少し理解が深まるかも知れません。

戦争について子どもに対して過剰に残酷な描写などは一切ありません。そもそも傷ついたり亡くなったりするシーンがないのです。その点の心配はいりません。

中村さんも松虫号もただ真面目に平和に暮らしていただけで、またそれが続くことを望んでいたでしょうが、戦争が一切合財を流し去ってしまいました。戦争の持つ悲しさ、恐ろしさの一面を教えてくれる本です。

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