シンデレラ または、小さなガラスのくつ


文 ペロー童話
絵 エロール・ル・カイン
訳 中川千尋
発行 ほるぷ出版
初版 1999/5/31
対象年齢 5歳から
文字の量 やや少なめ~やや多め
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 B

シンデレラ または、小さなガラスのくつ  のあらすじ・内容

有名なシンデレラのお話です。

ある身分の高い男の人が再婚しました。相手の女性は気位が高い威張りやでその娘二人も母親そっくりでした。しかし男の人は女性のいいなりでした。男の人にも前の奥さんとの間にとても心優しい娘が一人おりました。その娘は継母と義姉たちに虐げられて毎日を過ごしていました。心の醜い継母達にとって心優しい娘は癪に障るのです。娘は粗末な衣服をつけ、召使い同様に使われ、暖をとるにも暖炉の隅の灰の上に座っていました。それが故にシンデレラ(灰まみれの娘)と呼ばれるようになります。

ある日王子様が舞踏会をひらくということで、義姉達はおしゃれをして出かけていきます。そのおしゃれは趣味の良いシンデレラが準備してあげたものでした。その後一人残ったシンデレラは自分も舞踏会に行きたかったと涙を流します。

そこへ仙女が現れます。仙女は魔法でかぼちゃから馬車を作り、ネズミから馬を作り、さらに御者やお付きの者を作り、シンデレラの粗末な服をキレイなドレスに変え、最後に美しいガラスの靴を手渡しました。そして一つだけ注意をします。この魔法は真夜中の12時までしか効かない。それをすぎると魔法が解けてみんな元に戻ってしまうというのです。シンデレラはその前にお城を出ると約束して太うかいへと出かけていきました。

舞踏会では、美しいシンデレラは注目の的でした。王子様はシンデレラにつきっきりで、楽しい時間が流れました。しかし12時を告げる鐘が鳴り始めるとシンデレラは慌ててお城を出ていきます。あまり慌てたものでガラスの靴の片方が途中で脱げて落としてしまいました。家へ帰り着いた時にはすべての魔法は解け、残ったのはガラスの靴の片方だけでした。

シンデレラ または、小さなガラスのくつ の解説・感想

安心して見られるペロー版のシンデレラ

シンデレラの絵本は今までそれこそ星の数ほど出版されてきたかと思いますが、この本は特徴的なところがあります。

まず題名もそうですし細かいエピソードなどかなりペローの原典に沿って作られているようです。(どれほどまで忠実なのか細かいところまではわかりませんが。)私の記憶にはないようなところがいくつもありました。例えばシンデレラが仙女に命じられてトカゲを捕まえてきたりとか、ラストの義姉の扱いとか。因みにグリム兄弟の『灰かぶり姫』ですと、かなり残酷な場面もあるのですが、ペロー版にそった本作ではそういうところは一切ありませんでした。ご安心ください。

日本の昔話のような寓話の一面も

シンデレラは義姉達のおしゃれを精一杯手伝ってあげたりもします。生来の優しさ(お人好しにも見えなくはないが)が描かれています。日本の昔話によくあるような心根の優しい善人が最終的には幸せを勝ち取るという寓話の要素もこの絵本にはあります。

エロール・ル・カインの美しく幻想的な絵

何と言っても他のシンデレラ絵本と決定的に違うのはこの絵でしょう。絵を描いているのはエロール・ル・カイン。華麗で幻想的な挿絵は大人の鑑賞にも耐えうるような美しいものです。太った義姉のコルセットの紐を思い切りシンデレラが引っ張る場面など、ユーモアも散りばめられています。ちなみに継母の顔、悪の権化のようで怖すぎです(笑)。もしかしたら怖がる子もいるかな。絵の半分はモノクロになっていますが、恐らく元はカラーだったんじゃないかな。せっかくなら全部カラーで見せて欲しかったです。上の表紙はちょっと小さくて見づらいと思います。絵の雰囲気を知りたい方はこちらの記事が参考になりますよ。

やや大きい子向けのシンデレラかな

夢のあるストーリーはシンデレラそのものなのですが、精緻な絵や文章の量、それから言い回しなども若干小さい子にはわかりにくい面があるかも知れないので、5歳からとしました。出版社のサイトでは『5・6歳から』とされています。

ちょっとしたトリビア

本書の英語タイトルは『Cinderella or The Little Glass Slipper』です。ん?『Slipper』?、スリッパなの?。これはどうしたことかと思ってちょっと調べてみました。どうも『Slipper』とはいわゆるスリッパではなく舞踏会で使う上履きの事のようなんですね。こちらに詳しく解説されていました。

知ってると思うけど

誰でも知ってるお話なので蛇足かと思いますが、一応その後の続きをご紹介します。シンデレラに恋した王子様は、残されたガラスの靴が足にぴったり合う女性と結婚するというお触れを出しました。始めの内は王家や公爵家の女性を試していましたが、やがてお使いのものがシンデレラの家にも現れます。義姉達はもちろん合いません。しかしシンデレラはぴたりと合うばかりでなく、もう片方のガラスの靴も取り出しました。義姉達は驚き、詫び、許しを請います。シンデレラは義姉達を許し、お城へ行き、王子様と結婚しました。そして義姉達もシンデレラの計らいで貴族と結婚するのです。

義姉にも結婚させるというシンデレラの心優しさはグリム童話だったらありえませんね。ペロー版でよかった。グリム版だと、義姉は鳩に目をくりぬかれ、足を切断されて松葉杖となり、シンデレラは復讐が成って笑みを浮かべるというものらしいです。これではさすがに子どもに読ませづらい…。