いやいやえん


文 中川李枝子
絵 大村百合子
発行 福音館書店
初版 1982/11/
対象年齢 5歳から
文字の量 かなり多め
ページ数 178
発行部数 不明
オススメ度 A

概要
7つの短編からなるロングセラーの童話集です。ほとんど毎ページに小さなモノクロの挿絵はありますが絵本とまでは言えない感じです。あくまでも文章主体の本です。

  1. ちゅーりっぷほいくえん:物語の舞台となるちゅーりっぷほいくえんの紹介と主人公とも言えるしげる君のお話。しげる君のきかん坊ぶりと先生との掛け合いが笑えます。
  2. くじらとり:園児が積み木で作った船で海に出てくじらを捕まえてくるファンタジー冒険記です。
  3. ちこちゃん:悪さをして叱られたしげる君は、ちこちゃんが先にやったからと言い訳をします。ところが不思議な事にそれからしげる君は服装や行動が自分の意に反してちこちゃんと同じようになってしまいます。面白くてシュールなお話です。
  4. やまのこぐちゃん:ちゅーりっぷほいくえんの先生に手紙が届きます。自分の事は自分でできるようになったから保育園に入れてくださいという内容。承諾の返事を送るとやってきたのはこぐまのこぐちゃんでした。最初は怖がっていた園児達も徐々に打ち解けこぐちゃんと仲良くなっていきます。不思議で楽しいお話です。
  5. おおかみ:お休みしたしげる君が一人原っぱで遊んでいるとおおかみがやってきました。おおかみはしげる君を食べるつもりですが、その目論見を隠して近づきます。でもあまりにしげる君が汚くてそのままでは食べられません。大急ぎで家に戻ってしげる君を洗うための準備をしてきますが…。悪意のあるおおかみが偶然に翻弄されて逆に散々な目に遭う面白いストーリーです。
  6. やまのぼり:お天気が良いので園児達は山登りにでかけます。先生の事前の言い付けを全然守らないしげる君は行ってはいけない黒い山で迷ってしまいますが…。相変わらず素行の悪いしげる君が結局損をするというお話です。
  7. いやいやえん:お父さんお母さんお姉さんの言う事を全然きかないでいやいやばかりのしげる君は、保育園の先生の提案で『いやいやえん』に連れて行かれます。ここではいくらわがままを言っても怒られません。細かいことを注意されもしません…。童話でここまで割り切った展開は私も初めてです。かなりシュールなお話です。

 

感想
一つ一つのお話がそれぞれ1冊の絵本になってもいい位のボリュームと内容です。そういう意味ではかなり贅沢な本かも知れません。お話もバラエティに富んでいて、笑えたりワクワクしたり考えさせられたり色んな楽しみが含まれています。さすが『ぐりとぐら』の作者さんコンビです。

概要を見ていただいてわかるように、しげる君という悪い子キャラがメインで登場します。いつも大人の言うことを聞かずわがままを言います。そのキャラが徹底しているので、ちょっと哀れな気もしてくるほどですが…。今風の教育だったら、その子の気持ちを汲んであげながらも懇々とやさしく粘り強く諭すところでしょうが、この本はそんなに甘くないのです。バチが当たったような展開になったり、逆にしげる君のわがまま通りになるという意地悪な展開になりかえってしげる君が困惑する事もあります。この辺はかなりシュールなので、親御さんによっては好き嫌いがあるかも知れません。私はこれが嫌いではありません。世の中そんなに単純じゃないんだから、優しく優しくだけじゃなくて毒やトゲも知っておいた方が、より他者の気持ちを汲みとりやすくなるのではないかという気がします。

最後の『いやいやえん』のお話は、アニメーションの宮崎駿監督が衝撃を受けて、アニメ化を打診した事があるのだそうですね。実現はしなかったみたいですが。実はウチの子も『いやいやえん』の話が一番面白かったと言ってました。こんなにもシュールな話、こどもが読んでそんなに面白いものなのかと思いますが、こどもの想像を越えているところが興味をひくのかな。何度も読み返しているようです。こども向けの本と言うとかわいいとか楽しいとか、そういう方向にまずは考えてしまいますが、こどもの好奇心はそんなに単純じゃないのですね。

絵が少なくて文章が多い本なので、ある程度の文章量に慣れてからの方がいいと思います。本には「4歳から小学校初級向き」と書いてありましたが、4歳ではちょっと早すぎるかと思って5歳からにしました。でもどの話も面白いので読み聞かせ好きのこどもなら5歳でなくても大丈夫かと思います。

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