あさえとちいさいいもうと


文 筒井頼子
絵 林明子
発行 福音館書店
初版 1982/4/20
対象年齢 3歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明。1995/8時点で35刷
オススメ度 B

あさえとちいさいいもうと のあらすじ・内容

あさえが一人で家の前の道路で遊んでいるとお母さんが家から出てきました。お母さんは小さい妹のあやが寝ているのでその間にお出かけして用事を済ませてくるというのです。しかしお母さんが出かけてまもなくするとあやが起きてしまい、泣きながら玄関に出てきました。あさえは「遊んであげるよ」と言って靴を履かせてあげます。

家の前の道路で、あやのためにチョークで長い線路を書いていたあさえですが、気がつくとあやがいません。そして大通りの方からキキーッという自転車の急ブレーキの音が聞こえてきました。あさえはあわてて大通りへ駆けていきますが…

ちょっとドキドキさせられますが、幼い姉妹のハートフルなお話です。

あさえとちいさいいもうと の解説・感想(注意:結末も若干ご紹介しています)

筒井頼子さん、林明子さんの最強コンビによる作品です。『いもうとのにゅういん』は本作の続編に当たり、数年後のお話になります。

完成度の高い珠玉の小品

お話は現実の日常にも似たような事がありそうなほんの小さな束の間の出来事であり、ストーリーも非常に単純です。言ってみれば本作は小品なのです。ところが非常によくできた小品なんですねぇ。絵も文章も丁寧に描かれていてところどころに印象的な細かいディテールが組み込まれています。大人が読んでも楽しめると思います。こども目線で描かれているので自分のこどもの頃の気持ちをふと取り戻すような感覚におちいります。

林明子さんの絵はホントにすごい

特に絵はすごいです。柔らかい髪の毛を三編みに編んでもらって身なりもきちんとしていて、きっとしっかりしたいいお母さんなんだという事がわかります。あさえの、自分が大きなお姉さんになったような気持ち、おしゃまな態度、心配で心配でドキドキする気持ち、妹を愛おしく思う気持ち、そういう本来目に見えないものが絵からビンビン伝わってきます。特に最後のページの絵はとても微笑ましい。あさえはあやを見つけ、あやを想う気持ちが高じて抱きしめるのですがあやはなされるがままの苦しそうな体勢になっています(笑)。でもあさえは本当に心から「良かった」と思っているのでしょうね、満足そうな表情をしています。こうしてこどもは成長していくんだなっていう感慨深さがあります。そう言えばこのページには文章がありません。あえて不要と考えたのでしょうか。絵だけでもここまでの事を語ってくれるのです。さすが林明子さんです。

親子でドキドキさせられる

お話の中盤は、あさえがあやを探し回るところが描かれます。ここは少々ドキドキさせられます。あやに似たような子がいたり、どこからか小さい子どもの泣き声が聞こえてきたりします。読者の子どもも一緒になって心配してくれることでしょうし、読み聞かせる親御さんも子を持つ身としては他人事ではないかも知れませんね。

ほとんどの絵が子どもの低い視点から見たものになっています。トラックはものすごく大きいし、大人は足だけとか胸までしか見えてなかったり、家々の塀は高くて広く周りを見通すことができません。とうの昔に忘れてしまったけど、子どもから見える世界はこんななんですね。読者の子どもから見たらすごくリアルなのかなと思われます。そしてそれだけに、あやを探す時のあさえの緊迫した気持ちがわかるような気がします。

裏表紙まで見てくださいね

上でご紹介した最後のページ。あさえがあやを抱きしめるところですが、実はずっと後ろの方にお母さんの姿が小さく見えています。用事を終えて帰ってきたら誰もいないので探しに来たのでしょう。そして裏表紙にはあやが左右でお母さんとあさえに手を引いてもらって家に帰る姿が描かれています。あさえとあやが楽しそうにおしゃべりして、それをお母さんが見守っています。読者の子どもに安心して絵本を閉じてもらえるとても雰囲気のいいラストです。読み聞かせの際は、途中ドキドキさせられた分、是非裏表紙までしっかり見せて安心させてあげてくださいね。

日常的なお話ですから子どももわかりやすいでしょう。兄弟姉妹のいるお家なら、感情移入しやすくてなおさら楽しめると思います。また年上の子は、年下の子を可愛がる事を学べるかも知れません。

ちゃんとしたストーリーがありますが内容はシンプルで3歳位のこどもにピッタリです。でも細かいところまで見ていくと上記でチラリと紹介したように奥深さもあって、読み手の年代によってそれなりの楽しみ方ができる本なのかなと思います。

老婆心ではありますが、読者の小さいお子さんがだまって一人でどこかに遊びに行ったりしないように、この絵本を読み聞かせるタイミングで言い聞かせてあげた方がいいかも知れないですね。私が子どもの頃の時代ならいざしらず、現代ではこんなお母さんはいないと思いますが、子どもが真似したら大変。

林明子さんの絵には、他の作品に出てきたキャラクターがさりげなく登場していることがたまにあります。他の作品も持っている方は探してみたら面白いでしょう。

筒井頼子さん、林明子さんコンビの作品は、本作に限らず、子どもはもちろん楽しめますが、大人が読んでも(と言うかむしろ大人の方が)ツボを押されてウルウルしてしまう、素晴らしい作品ばかりです。他にもご紹介していますのでご覧いただければと思います。 → 『いもうとのにゅういん』『はじめてのおつかい』『とんことり』『おでかけのまえに』『おいていかないで

私が林明子さん好きなので、筒井頼子さんとのコンビ作品以外にも林明子さんの絵本をいくつかご紹介しています。『林明子』のタグからどうぞ。

あと、あさえと同じように主人公がお姉さんの立場である絵本も他にもいくつかご紹介しています。それぞれ微妙に年代が違います。 → 『ちょっとだけ』『こねこのチョコレート

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