火くいばあ


文 清水達也
絵 福田庄助
発行 ポプラ社
初版 1972/6/
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 35
発行部数 不明
オススメ度 B

火くいばあ のあらすじ・内容

貧しい村にかよという娘がおとうと住んでいました。おかあはかよが小さい頃に亡くなり、かよはおかあの思い出が残る赤いおわんをいつも抱えてすごしていました。おわんを抱えていればいつかおかあが戻ってくるような気がしていたのです。村の子ども達がそれを馬鹿にしてもかよは黙っておわんをぎゅうと抱きしめるだけでした。

ある頃から村に火くいばあという物の怪が出るようになります。火を見つけてはそれを食っていくというのです。最初の内は山に仕事に出た人だけが襲われていたのですが、とうとう村内の一軒の家が被害に遭います。家の戸が焼けて穴があいてしまいました。村の人達は火くいばあに見つからないよう夜でも明かりを点けず、かまどの火も早々に消してしまうようになりました。しかしいつまでもそんな生活を続けてはいられません。かと言って他に有効な対策は見つからないままでした。

村の騒動を見ていてたかよはある日おとうに「村の真ん中に小屋を建てて欲しい」と言います。おとうはかよの願いを聞き入れ小屋を建てます。

その夜、村で唯一火を灯していたかよの小屋に火くいばあが現れます。おわんを抱きしめたかよを熱い光の輪が包み、どこかでおかあがかつて歌ってくれた歌が聞こえてきます。「ひとつ ほったてごや たんぼの なか たてりゃ ひっこし おばあの こもりうた」

翌朝おとうと村人がかよの小屋にやってきましたが、かよは怖がる様子もなく、また一つ別の場所に小屋を作って欲しいと頼みます。

火くいばあ の解説・感想

心に傷をもった者に対する深い優しさを感じる隠れた名作でした。作者はあとがきでこう書いています。

人と人とのつながりにおける底知れぬやさしさを追ってみたかったのです。

作者がこどもの頃に聞いていた火くいばあの伝説をモチーフに作られたそうですが、映画か何かのようにとても練られたお話だと思いました。赤いおわん、小さい頃おかあに歌ってもらった「ひっこしおばあのうた」、『くわひょうくわひょう』という寂しい風の音。それらがお話の進展に伴って徐々にかよと火くいばあを結びつけていきます。特に『くわひょうくわひょう』という火くいばあが来ると鳴る風の音はとても哀しそうな音の表現です。しかもかよにはこれが『かよう かよう』とも聞こえるようで、かよは火くいばあの事を恐ろしいとは思えないのです。

火くいばあが生まれたエピソードはとても哀しいものでした。火くいばあがまだ人間の時、幼い子どもがいたのです。しかし火事で子どもを失ってしまい心に深い傷を負っていたのです。かよとはまったく逆の立場でした。

最後のほんのささいな癒やしに、胸がいっぱいになってしまいました。火くいばあはかよに自分の子どもの影を見、かよは火くいばあにおかあの影を見ます。そうして互いにすくわれるのです。

絵は素人目に一見雑な感じにも思わるタッチなのですが(ド素人が偉そうですが許してください)、色使いと濃淡が美しい哀愁のある絵です。読後はむしろこのお話にぴったりだと思い直しました。

初版が1972ですから古いですね。やはりいいものは生き残るのだなと思いました。

ただ一点だけ心配なのは肝心のこどもが理解できるかどうかというところです。例えばかよと火くいばあが互いに癒やし合う大事な場面などはみなまで言わない暗示的な表現なのでわかりづらいかも。子守唄の位置づけも大人ならわかってもこどもは理解しにくいかな。ウチの年長さんは説明してあげてもイマイチ腑に落ちない様子でした。あと、かよのおかあと火くいばあが同一人物であるという誤解も招きやすいと思います。ある程度の読解力が必要な作品です。

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