火くいばあ


文 清水達也
絵 福田庄助
発行 ポプラ社
初版 1972/6/
対象年齢 8歳から
文字の量 やや少なめ
ページ数 35
発行部数 不明
オススメ度 A

概要
貧しい村にかよという娘がおとうと住んでいました。おかあはかよが小さい頃に亡くなり、かよはおかあの思い出を宿す赤いおわんをいつも抱えてすごしていました。

ある頃から村に火くいばあという物の怪が出るようになります。火を見つけてはそれを食っていくというのです。

村の騒動を見ていてたかよはある日おとうに「村の真ん中に小屋を建てて欲しい」と言います。おとうはかよの願いを聞き入れ小屋を建てます。

その夜、村で唯一火を灯していたかよの小屋に火くいばあが現れますが…

 

感想(若干ネタバレ注意)
心に傷をもった者に対する深い優しさを感じる隠れた名作でした。作者はあとがきでこう書いています。

人と人とのつながりにおける底知れぬやさしさを追ってみたかったのです。

作者がこどもの頃に聞いていた火くいばあの伝説をモチーフに作られたそうですが、映画か何かのようにとても練られたお話だと思いました。赤いおわん、小さい頃おかあに歌ってもらった「ひっこしおばあのうた」、『くわひょうくわひょう』という寂しい風の音。それらがお話の進展に伴って徐々にかよと火くいばあを結びつけていきます。

火くいばあが生まれたエピソードはとても哀しいものでした。火くいばあもまた心に深い傷を負っていたのです。

最後のほんのささいな癒やしに、胸がいっぱいになってしまいました。

絵は素人目に一見雑な感じにも思わるタッチなのですが(ド素人なもので許してください)、色使いと濃淡が美しい哀愁のある絵です。読後はむしろこのお話にぴったりだと思い直しました。

初版が1972ですから古いですね。やはりいいものは生き残るのだなと思いました。

ただ一点だけ心配なのは肝心のこどもが理解できるかどうかというところです。例えばかよと火くいばあが互いに癒やし合う大事な場面などはみなまで言わない暗示的な表現なのでわかりづらいかも。子守唄の位置づけも大人ならわかってもこどもは理解しにくいかな。ウチの年長さんは説明してあげてもイマイチ腑に落ちない様子でした。

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