バルバルさん


文 乾栄里子
絵 西村敏雄
発行 福音館書店
初版 2008/3/
対象年齢 3歳から 自分で読むなら小学校初級向き
文字の量 やや少なめ
ページ数 32
発行部数 不明
オススメ度 A

バルバルさん のあらすじ・内容

バルバルさんは床屋さんです。

ある日お店で開店準備をしているとなんとライオンがやってきました。たてがみがぐちゃぐちゃになったので、キレイにして欲しいというのです。バルバルさんは動物が来店したことにビックリしながらもライオンの要望通りに仕上げ、かっこよくなったライオンは喜んで帰ります。

なんと次はワニがやってきました。髪が無いのでかっこいい髪を生やして欲しいというのです。また動物かとバルバルさんはビックリしながらも、ワニの希望を叶えるのにどうしたらいいか考えます。

その後も動物がやってきます。さて、なぜ急に動物たちがバルバルさんのお店に来るようになったのでしょうね。

バルバルさん の解説・感想(若干ネタバレ注意)

これは子どもは惹きつけられるでしょ

そんなにドラマチックというわけでもなく、のんびりした雰囲気で進む話ですが、子どもは大層惹きつけられるのです。動物がいっぱい出てくるし、動物との奇妙なやりとりが子どもにとっては不思議で面白いのだと思います。短い中にもちょっとした驚きやユーモア、優しさ、人生観などが盛り込まれ、絵もいいし、読後はよくできた映画を見たような充実感さえあります。完成度はかなり高いです。

ライオンはまあいいとして、ワニの要望は笑えますね。さすがに髪を生やすことはできないので代わりに次々と色んなカツラを試着することになり、その奇妙な様子も子どもにウケると思います。その次のヒツジも、え~ってなるような可笑しくてかわいい要望です。ご近所の飼い犬プードルのクラシックカットのようにしたいと言うのです。なんか気持ちはわかる気がする(笑)。さてどんな仕上がりになるのでしょう。さらにその次は泥んこのねずみらしき小動物がキレイにして欲しいとやってきます。一匹づつ順番に動物が来店するお話のスタイルは、次はどんな動物でどんな要望かなって楽しみになっていいですね。

バルバルさんはすごい

バルバルさんは誰にも優しく丁寧に対応します。バルバルさんは動物だからといって手を抜きません。可笑しい要望にも切実な要望にも誠実な仕事ぶりで応対します。動物によっては恥ずかしがったり、対応してもらえるのかちょっと心配してたりもしますが、バルバルさんはみんな優しく迎え入れます。そして動物たちはみんな大喜びで帰っていきます。『仕事』というものの本質を見せられるようです。

ラストもいい感じ

お話の最後がまたいいのです。なぜ急にお店に動物が来るようになったのかその『理由』と『犯人』が判明します。『理由』が判明したところは、それに対するバルバルさんの対応が実に(らしくて)いい。素敵な生きかたです。そして以後、人間と動物が混在するような形で繁盛するお店の様子が多文化共生的でこれまたいいです。バルバルさんの誠実さには差別がまったくないんですね。因みに『犯人』が明らかにされるところは、さりげなくそうと匂わせるだけで明快には説明してないんです。このさじ加減が実に絶妙でいい。これは作者のイタズラでもあると思います。ハッと気づいた子どもは得意になってお父さんお母さんに説明してくれることでしょう。さらにこの絵本を読み終えて裏表紙を見ると…こんなところにも『犯人』の伏線が。

やっぱり西村敏雄さんの絵はいいね

お話ももちろん楽しいのですが、西村敏雄さんの絵がこの本の世界を作り上げる大きな要素になっていると思います。私にとっても西村敏雄さんは大好きな絵本作家の一人です。心地よいお洒落な色使い。(元々西村敏雄さんはインテリアのデザイナーなんです。)動物たちのコミカルな表情。ほのぼのしていて親しみやすく、ユーモアを含んでいるんだけど品もある。親から見てもこどもに安心して読んであげられる絵本だと思います。

バルバルさんという名前。バーバーから来てるのかな?本当の由来は知りませんが、響きがよくてこどもにも馴染みやすい(でも小さい子にはちょっと言いにくそうなあたりも)いい名前ですね。そんなところまで作り手の気持ちが行き届いている感じがします。因みに英語のタイトルだと『MR.BARBAR THE BARBER』こちらの方が洒落が効いてて面白いですね。

他の西村敏雄さんの作品もご紹介しています。『西村敏雄』のタグからどうぞ。西村敏雄さんの作品はいろんな動物が登場することが多いのですが、特に本作のように動物のお客さん達に対して誠実に対応するお話なら、お医者さんのお話である → 『アントンせんせい』がおすすめ。

バルバルさんには続編もあります。でも『こどものとも』で発表されただけで単行本としてまだ発売されていないようです。普通に入手できるのかちょっとわかりません。タイトルは『バルバルさん きょうは こどもデー』。図書館に『こどものとも』のバックナンバーがあれば読めるかも知れません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。