ロバのおうじ


文 M.ジーン・クレイグ
絵 バーバラ・クーニー
訳 もきかずこ
発行 ほるぷ出版
初版 1979/6/15
対象年齢 6歳から
文字の量 やや多め~かなり多め
ページ数 49
発行部数 不明
オススメ度 A

ロバのおうじ のあらすじ・内容

広く平和な国を治めている王様とお妃様がいました。王様は自分の財産を数えるのが大好きでした。お妃様はキレイな服や装飾が大好きでした。しかし二人には子どもがありません。強い力を持つ魔法使いがいると聞いた二人はその魔法使いに会いにいき、子どもを授けて欲しいと頼みます。魔法使いは報酬として金貨をきっちり33袋要求します。王様は自分の財産が減ることが嫌で、金貨の他に鉛でできた偽の金貨を紛れ込ませます。それに気づき、怒った魔法使いはこのように魔法をかけます。

あやつらには こどもが うまれるじゃろう! じゃが そのこは ロバそっくりの すがたかたちを しているのじゃ! そのこは いっしょう ロバそっくり。だれかが そのこのすがたかたちを きにとめず こころから あいするようになるまでは!

生まれた子どもはロバの姿形をしていました。ロバの王子は賢く、品よく、元気に育っていきますが、その姿故に誰にも相手にされません。実の父母である王様とお妃様からもです。王子は孤独でした。

そんな折り、旅のリュート弾きから王子はリュートの弾き方を教わります。一生懸命練習して、もうそのリュート弾きが教えることがなくなる位まで上達しました。そして自作の美しい曲を父母に聞いてもらいにいきます。しかし王様もお妃様もこちらを見ることさえなく、適当にあしらうばかりでした。

この城にいても誰からも認められることはないと悟った王子は、一人リュートを携えて城を出て旅をする事にします。旅の途上で、王子は自然の姿をリュートで奏でることを学んでいきます。

月日がたち、王子はあるお城にたどり着きました。王様とお姫様の前で演奏すると、ことにお姫様に喜ばれ、しばらくお城に滞在することになります。

お城での生活は幸せでした。ロバの王子の親切さや賢さは評判となります。そしてお姫様とは毎日のようにリュートの演奏を聞かせたりおしゃべりをしたりして楽しい時間を過ごすのでした。

そんなある日、ロバの王子はお姫様に別々の国から3人の立派な王子が結婚を申し込んでいるという話を聞き及びます。悩むロバの王子。しかしお姫様が立派な王子様と結婚され、その結婚式でリュートを演奏しなければならないだろう事を考え、お城を出ていくことを決意します。そしてお姫様に最後の悲しい別れの曲を弾いて聴かせるのでした。

グリム童話の名作を、バーバラ・クーニーの美しい絵で見せてくれる、小さな宝物のような絵本です。

ロバのおうじ の解説・感想

これは名作絵本です!

『ロバのおうじ』はグリム童話の一篇です。今まで何度も絵本になってきたかも知れません。しかしその中でもこの絵本は1970年代の初版出版ながら今でも新品が入手可能であり、長く愛されてきたことがうかがわれます。グリム童話に限らず古いお話は再話する人によって味わいが異なる事が多いようですが、本作は詩情豊かな名作中の名作と言っていいと思いますよ。

内面を見る目を持たない周囲の愚かさ、王子の孤独と放浪、音楽の力、そして外見にとらわれない心からの愛情。奥行きのあるお話です。心理描写の多さと多彩さは童話としては格別だと思います。

上記でご紹介したあらすじはとても哀しいものですが、最終的にこのお話がたどり着くところはロマンチックなハッピーエンドですからご安心ください。それは魔法使いの魔法の言葉から何となく想像していただけるかと思います。

ひどい親の態度だが最後に救いも

それにしてもこの王様とお妃様の親としてあまりにも身勝手な態度。しかし絵本として客観的に見るから他人事のように評価してしまうけど、大なり小なりこれに類する事は自分もやってしまっていると思い当たりました。子を持つ親として反省を促される面もありましたね。でもこの絵本のラストシーンは、この王様とお妃様ではないけれど、親子の仲のいい姿が描かれています。読者の子どもからしたら、このページは結構安心させられるところなんじゃないかな。

この絵は飾っておきたいレベル

なんといっても、絵が素晴らしいです。額に入れて飾っておきたい位の美しい絵が次々出てきます。グリム童話なので特に前半なんか非常に人間の醜い面が出ているのですが、この絵によってだいぶ印象が和らいでいます。和らぐだけでなく、王子の孤独とこの絵の美しさの組み合わせが絶妙によくて心を揺さぶられます。特にタイトルのページの前にある星空の下でリュートを弾く王子の絵はいい。物語を読む前はあっさり通り過ぎてしまうんだけど、読んだ後にまたこの絵を見ると心に沁みます。しかしこの場面、物語の中頃にあるんだけど、何故こんな位置に絵だけ持ってこられたのか??

文章もいいけどちょっと長いし馴染みのない言い回しも

日本語の文章は読みやすいですし、抑えめの表現がかえって叙情的な感じがします。訳者さんもグッジョブだと思います。

出版社のサイトには対象年齢は『4・5歳から』とされていました。でも文章量、そして話の奥行きからして、もう少し大きくなってからの方が楽しめるんじゃないかなと思い、ここでは『6歳から』としました。小学生、中学生ともっと大きくても楽しめるだろうし、大人でもこの絵本の魅力にハマる人は多いと思います。ただ、ハマるのは圧倒的に女の子であろうとは思いますね。男の子にも味わってほしいけどなァ。

カタカナがほんのわずかありますが、ほとんどひらがなです。でもページ数も文章量もかなりあります。ほんの一部ですがこどもには馴染みがないであろう言い回しや言葉が使われています。読み聞かせるにしても、自分で読むにしても、ある程度の国語力を必要とするかも知れません。が、この位の本を読もうというこどもならば、これもまたよい勉強の機会となるでしょう。

バーバラ・クーニーさんは二度もコールデコット賞を受賞しているんですね。バーバラ・クーニーさんの他の作品もご紹介しています。 → 『しらゆきべにばら』『ルピナスさん

他にもグリム童話をベースにした絵本をご紹介しています。 → タグ『グリム童話

王子が弾いたリュートってどんな楽器?と興味を持った方もおられるでしょう。Youtubeにもリュートの演奏がたくさんアップロードされていますよ。

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